弊社で製作しているすべり軸受は、銅合金軸受とホワイトメタル軸受の2種類です。どちらの場合も、「裏金鋼材」(軸受の強度を高めるために鋼鉄を使用)と「合金」(軸が軸受に万が一に接触してしまったときの摩擦や摩耗を軽減するために鋼鉄よりも軟らかい材質を使用)を密着させる必要があるのですが、裏金鋼材と合金が密着した軸受素材をどこかで売っていて購入できる…というわけではないので、弊社工場内で鋳造を行って自社で作り上げています。
この写真は銅合金軸受の鋳造工程で、裏金鋼材の内側に銅合金が注がれている様子です。もしかしたら銅合金を「注ぐ」という言葉に違和感を覚えるかもしれませんが、ご覧の通り、銅合金が液体状になっているので文字通り「注ぐ」ことになります。銅合金の融点(固体が液体状になる温度)は1,000℃以上ですので、この写真がいかに高熱になっている状態なのか、ご想像いただけるのではないでしょうか。
写真を見ると、銅合金が注がれている裏金鋼材も、熱されて真っ赤になっています。この状態から一気に冷却する「高熱→冷却」の過程で、裏金鋼材の内部に「残留応力」という物理的な力が発生するのですが、これがとても手ごわい存在で、銅合金すべり軸受製作の難易度が極めて高くなる最大の要因になります。
「残留応力」があると何が起こるのか。実は、想像もつかないかもしれませんが、鋳造したすべり軸受の加工を進める度に、軸受に変形が発生します。特に弊社が得意としているのは肉厚が薄い軸受ですから、肉厚が厚い軸受と比べて変形が生じやすいという特殊性があります。どういう変形をするのかは、ある程度は予測がつきますが個体差があるため、一個一個が全て微妙に異なる形になります。
すべり軸受は精密パーツですから、このままの状態で使用することはできません。そこで、なんと、手作業で変形を修正する「整形」と呼ばれる工程が必要になります。
銅合金すべり軸受の鋳造を行うための設備とノウハウがあるだけでも稀有なのですが、更に加えて、残留応力を踏まえた設計や加工、そして整形が必要になるため、弊社は日本のみならず世界を見渡しても希少価値が高い、産業界に無くてはならない軸受メーカーになっております。極めて難易度が高く、極めて手間がかかる銅合金すべり軸受は、弊社の真骨頂だと言えます。これからもこの特殊な技術力を磨き上げながら、日本、そして世界の産業界や人々の生活をすべり軸受で支えて参ります。
※鋳造工程についてはホームページ内の「軸受の製造 – 鋳造」のページで、残留応力と加工については「軸受の製造 – 加工」のページでもご説明しております。是非ご覧ください。
※弊社で製作可能な軸受の銅合金や鋼材などの材質の詳細をご確認なさりたい方はホームページ内の「軸受の構造と成分表」のページをご参照ください。