弊社が加盟している日本舶用工業会の新年賀詞交歓会が1月10日に開催され、
また、関東舶用工業会の新年賀詞交歓会が1月21日に開催されたので、両方に出席しました。
舶用業界全体としては、特に大型船舶(世界を行き来する運輸タンカーなど)が
コロナ渦に入ってから世界全体で物流の動きが活発になったことに伴い、この数年は好況で、
この好況は来年以降も暫くは続くのではないかという見込みになっています。
弊社もその恩恵に預かって…と言いたいところですが、実のところ、
弊社は基本的に、大型船舶にはすべり軸受を供給していません。
大型船舶は長距離運航が前提になるので速度よりも燃費が重視されるため、
回転数が遅い2サイクルの「低速エンジン」が採用されています。
回転数が遅くて安定しているため、軸受にかかる負荷や使用温度が抑えられます。
そのため、すべり軸受の合金材質はホワイトメタル(錫ベース)が一般的です。
ホワイトメタル軸受は弊社でも製作可能であり、得意としていますが、
大型船舶用はシャフト(クランク軸)が巨大になるため、それを支える軸受の厚さは相当なものになり、
また、弊社で製作可能なサイズの上限である、外径500mm台を大きく上回る寸法になります。
「餅は餅屋」という言葉の通り、大型軸受が得意な軸受メーカーが世の中には存在するんです。
弊社が得意としている肉厚が薄いすべり軸受は、
回転数が速い4サイクルの「中速エンジン」で主に使用されています。
単純に回転数が速いだけでも軸受にかかる負荷や使用温度は上がりますが、
それだけではなく、状況によっては急発進と急停止を繰り返す場合もあります。
回転数の変化が激しい使い方になると、軸受にかかる負荷や使用温度は更に上がります。
そのような仕様でこそ活躍するのが、弊社の軸受です。
マーケティングの世界で「ポジショニング」と呼ばれる用語がありますが、まさに、
弊社は「肉厚が薄いすべり軸受」に特化することでポジショニングに成功してきた会社だと言えます。
この在り方は、今後も当面の間は変わらないと思われます。
ちなみに、弊社が大型船舶にすべり軸受を供給していないために
好況の恩恵を全く受けていないのかというと、そんなことはありません。
大型船舶は、国と国などを長距離運航で行き来する船(外航船)としては長けていますが、
速度が遅くて、航行中の燃料消費量が著しく高く、
小回りが利かず、停泊港の制限もある…などの特徴があるため、
貨物などが国内に届いてからは、これらの特徴がデメリットになります。
そこで、国内においては地域と地域を中距離運航で行き来する船(内航船)の出番になります。
この内航船には、主に4サイクルエンジンが搭載されています。
つまり、世界的な物流の動きが活発化するということは、
タイムラグはありつつも、内航船の需要も活発化するということでもあるので、
実は、弊社は世界的な好況から間接的な形で恩恵を受けています。
また、海運以外の需要もコロナ渦を経て回復してきています。
そのような状況下で、弊社は取引先各社から引き続き安定供給を強く求められています。
大変有り難いことに工場が混み合っている状況ですが、決して胡坐をかくことなく、
弊社の軸受の新たな活躍の場を常に探し続けながら、
軸受による社会貢献を深めていく一年にしたいと考えています。
皆さんにとって、2025年がますます輝かしい一年になるよう、心よりお祈り申し上げます。